銀行取引の基本ルール1~5

 

 銀行は重要な取引先のひとつです。

 銀行の考え方を良く理解してください。以下、銀行とのお付き合いの仕方について言及いたします。
(※注記;便宜上、金融機関を総称して「銀行」と呼びます。)

■銀行は『晴れの日にはお金(傘)を貸して、雨が降り出したらお金(傘)を返せと言う』、こう嘆く方は少なくありません。
今一度銀行の成り立ちと、ビジネスモデルを理解してください。

 銀行は…
・貸出しの原資は預金です。預金者保護、融資金の回収は必須です。
・赤字補てん資金、こんな融資科目はありません。
・「苦しいから貸して」これは絶対禁句です。
・晴れの会社に傘を貸して利息を稼ぐ、これが基本的な収益モデルです。
・伸びる会社を伸ばす、これがミッションです。
 銀行にある傘は、すべて『日傘』です。『雨傘』は一本も置いていません。当然、雨が降ったら返せと言います。

●ルール1;銀行交渉は、いかなる時も前向きに…「日傘」しかないからです。
(※一部の制度融資・保証商品は除きます。)

■『金利負担を気にせずに、借りられるだけ借りよう』と提案しています。中小企業の資金政策に対する誤解があります。
以下を確認ください。
・貴社は、適時定量な資金調達が出来る優良企業ですか?
・銀行が「借りてください」と言ってくるから優良企業だ、違います。
・悪くなった時に貸してくれる会社が真の優良企業です。
・適時適量な資金調達が出来る会社なんて、ほとんどありません。
・ほとんどの会社は良い時に(のみ)貸してくれる普通の会社です。

 2つのリスクを比較してみましょう。
○リスク1;金融機関から融資を過度に受け過ぎて、資金が余る時のリスクは、余分な金利を支払う事です。
○リスク2;必要最低限の資金のみを調達し、余分な資金を調達しない時のリスクは、資金が枯渇して、継続が困難(倒産)になる事です。

 中小企業は、前者を選択すべきではないでしょうか。

 また、決算前に、財務指数を改善するために、借入れを意図的に返済して総資産を圧縮したり、自己資本比率をあげたり…
こんな愚策を行ってはいけません。決算上の指標は、格付け時に補正されます。また、「無借金経営を目指してください」と良く言われます。その通りです。但し、プロセスではなく、結果として目指しましょう。

 確認します。
 銀行は、困っていない時にお金を借りに行くところ、困ったら貸してくれません。

●ルール2;お金は、借りられる時に借りられるだけ借りておく。
●ルール3;財務諸表、自己資本比率等々、中小企業には(ほとんど)無関係です。
●ルール4;無借金経営は最終的な目標です。

■『運転資金は、最低年一回は借り直す。出来れば積み上げてください。』と提案しています。
以下を確認ください。
・借入れは、新たに借りなければ残高が減ります。手元資金が減ります。財務キャッシュフローはマイナスです。
・営業キャッシュフローのプラスで、財務キャッシュフローのマイナスを賄えていない会社は、絶対に年一回は、返済済み分を借り直してください。
・お金が減ってきたから借りるのではなく、定期的に返済分以上の融資を受ける、これが正解です。

●ルール5;運転資金は毎年借り直す。

 上記をご理解ください。
 銀行取引に対する世間の常識の内の幾つかは、明らかな間違いです。正確に申し上げるなら、それらは上場企業クラスに対する常識であって、中小企業には当てはまりません。間違えた常識を鵜呑みにせず、論理的に考えて行動してください。

2016年08月13日